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旧本館正面玄関の柱2本について
日時: 2004/06/27 10:05
名前: 水口 禎

 この度の母校創立120周年記念総会は全員の協力で、大成功裏に終えることが出来ました。会員全員に感謝したいと思います。
 さて、今総会出欠の「通信欄」に大変興味のある「返信」がありました。66期の石川博章氏からのもので首題に関するご提案でした。
[原文]
 安高の本館の正面二階ベランダを支えている四本の柱の中、正面の二本は欠けたままになっています。120周年記念行事までに修復出来ないものでしょうか。

 私自身も「修復完了時」から、ある「違和感」を持っていたのも事実です。高松さんからも何度もその「違和感」又は「不自然感」を聞いておりました。そこへこの度の石川氏からの通信です。多くの方の違和感と誤解(?)もあるかと思いまして、情報を提供したいと思います。

〜水口副会長の依頼により、芳賀雅美@86期が代理入力しました。〜
 本スレッドの以下のレスに、水口副会長の解説を順次掲載していきます。時間がかかるかもしれませんが、よろしくお願いします。 (芳賀)
メンテ

Page: 1 |

旧本館正面玄関の柱2本について(1) ( No.1 )
日時: 2004/06/27 10:30
名前: 水口 禎

 われわれの共通の誇りある素晴らしい文化財を少しでも正しく理解の上、保存しかつ未来に引き継いでいくことが今生きるわれわれに課せられた責務です。
 しかし、文化財の「保存と修復」との関係等には大変難しい微妙な問題が存在するのも確かなのです。何を以て「オリジナル」とし「修復」するのか、「後世の変更」をどう評価するのか。劣化した部分をどの程度まで修復(変更が不可避)することが許されるのか、材料の「取替」は許されるのか、防災上・構造的に不都合な場合はどう対処するか等々。
 世界一古い木造建築といわれる「法隆寺」の場合、創建当時から残存する木材は恐らく皆無ではないでしょうか(これが「改修」の実態です!)。それでも現存の法隆寺は、「世界最古の木造建築物」には違いないのです。その上この世に存在する限り、時間との闘い(加齢!)は不可避です。社会的な存在として、現行の建築法令上はある程度特例措置で規制緩和は可能ですが、防災上の問題、構造上の問題等々世界中の文化財が抱える問題でもあります。少し大袈裟なようですが、「母校旧本館玄関バルコニー」の2本の柱の「修理・復元」は、身近ですがその問題が顕在化した典型的な事例でもあるのです。
(代理入力:芳賀雅美@86期)
メンテ
旧本館正面玄関の柱2本について(2) ( No.2 )
日時: 2004/06/28 22:55
名前: 水口 禎
参照: http://www.tokyo-kuwano.com/honkan_syufuku1980.pdf

 東京桑野会創世期から会の発展にご尽力された故土屋七郎氏(57期、元幹事長)から譲り受けた貴重な資料である『重要文化財 旧福島県尋常中学校本館修復工事報告書』を紐解くことにより、修復後の現存する状況を理解することが出来ます。

『重要文化財 旧福島県尋常中学校本館修復工事報告書』1980年9月 より抜粋
○第三章 調査事項 ☆第二節 後世の修理
 明治22年に竣工した本館の修理及び増改築について…(中略)…大正年間には修理の記録は見当たらないが、写真によると明治33年には玄関の前柱は飾束であるが、大正9年の写真は柱に変わっている。飾束はベランダ床内の梏出し(水口注:ハネ出し)梁で支えていたが、雨水の浸入により梁が腐朽したため支持柱に変えたものである。この修理時期が何年であったのか資料がなく明らかにできなかった。大正9年の平面図に「理科教室」に間仕切りが加えられ小部屋を設けて準備室としている。明治末からこの頃までに加えられた改造である。…(以下略)…
(代理入力:芳賀雅美@86期)
メンテ
旧本館正面玄関の柱2本について(3) ( No.3 )
日時: 2004/06/28 22:56
名前: 水口 禎
参照: http://www.tokyo-kuwano.com/honkan_syufuku1980.pdf

『重要文化財 旧福島県尋常中学校本館修復工事報告書』1980年9月 より抜粋
○第三章 調査事項 ☆第三節 現状変更 (水口注:重要文化財指定に伴い行った「修理工事」直前の状態を現状と言っている)
 今回の修理にともなう調査によって建物の増築、改築等の経過がほぼ明らかとなったが…(中略)…昭和18年増築の東側下屋は撤去するが明治33年増築部分は撤去せずほぼこの時期の形に復旧整備することとした。現状変更の内容は次のとおりである。
1.東面1間通りの下屋撤去…(中略)…
2.後補の間仕切等撤去…(中略)…
3.玄関廻りを復旧整備した。
(1) 玄関前面の2本の独立柱を撤去して飾束の旧規に復した。
 玄関は八角形を半分にした平面をもち、この各角に柱を建てているが、当初は前方1階の2本は柱ではなく飾束であったことが明治34年の写真で判る。よって前柱2本を撤去して飾束に復した。
注)2階ベランダは雨漏りによって梁が腐朽し、構造的に無理が生じたので前方の飾束を柱に変えたものと考えられる。2階梁は鉄骨を用いて補強した。…(以下略)…
(代理入力:芳賀雅美@86期)
メンテ
旧本館正面玄関の柱2本について(4) ( No.4 )
日時: 2004/06/28 22:57
名前: 水口 禎
参照: http://www.tokyo-kuwano.com/honkan_syufuku1980.pdf

『重要文化財 旧福島県尋常中学校本館修復工事報告書』1980年9月 より抜粋
○第三章 調査事項 ☆第四節 形式技法調査
[軸部]…(前略)…この建物はほとんど大壁であるが隅柱と玄関柱は化粧になっている。隅柱は杉材で角柱面取り、布石上に角臍を入れて建て、上部は敷桁まで達していて飾りはない。玄関柱は八角形に造り、石製礎石の上に建てている。ただし、前端のものは柱ではなく1階部分は飾束となっている。壁際の柱は片蓋であり構造材と云うより化粧に重点がおかれている。礎石には洋風の繰形を付け、柱頭は枠木を付けてタスカン風(水口注:トスカナ風か?)にデザインしている。柱の前面には釋杖彫様の飾り溝を付けている。前端を柱でなく飾束にするためベランダ床下で梏出しの構造となっている。前端より内寄りの2本の柱に梁を架け、この梁を支点として主家の壁際から梏木を出し、その先端を臍差しとしている。ベランダは開放であるため床から雨水が浸入し、梏木と受梁が腐朽して構造的に無理が生じたため飾束を柱に変えたものであるが、大正9年の写真では柱となっており、明治34年以降、大正9年にいたる間に柱を入れて補強したものである。…(以下略)…
(代理入力:芳賀雅美@86期)
メンテ
旧本館正面玄関の柱2本について(5) ( No.5 )
日時: 2004/06/30 00:04
名前: 水口 禎
参照: http://www.tokyo-kuwano.com/honkan_syufuku1980.pdf

長々と「報告書」から引用しましたが、私なりに解読した結論は以下の通りです。

 『解体大修理時』のベランダ前面の2本の柱は、建築の『加齢』により、当初の設計では構造的に無理が生じたので、過去のある時点で前部に柱を2本建てた。その部分を含めて『修復』に際して、竣工時のオリジナルの形に「復元」するためにその2本の柱を撤去した。ただし構造的には無理があるので、鉄骨で「補強」(当然見えないように)して修復を終えた。
 そもそも「見様見真似」で、今まで全く経験したこともない「西洋建築」に果敢に挑戦して、こんなにも素晴らしい建築を完成させた先輩棟梁と多くの職人たちの開拓者精神には脱帽です。若干の技術的な齟齬などは不可避でしょう。相手は建築と自然と「人」なのですから。
 建築は全ての時間のなかに存在する宿命を負わされ、保全の手段の一つある修復時に竣工当時の姿に「復元」すること。当初の不自然なあるいは当時は可とされた構造等も現在不都合になればそれを維持するためには、その時代の「それなりの措置」を施すことなのです。これが過去の「文化財としての建築」を保存するための建築であり、技術であり、それに住む(使う)人の義務ではないでしょうか。これがこの建築を創った人たちへの私からのささやかなオマージュです。  <以上>
メンテ
旧本館正面玄関の柱2本について(終稿) ( No.6 )
日時: 2004/06/30 00:06
名前: 芳賀雅美@86期
参照: http://www.tokyo-kuwano.com/honkan_syufuku1980.pdf

〜代理入力した芳賀雅美@86期からの付記〜
 水口禎副会長(@67期)は、1958年建築学科卒の一級建築士でいわばこの道のプロ。しかも専門は《『近代建築(主に集合住宅)における加齢』状態の修復》で、まさにこの分野では最も見識のある技術職であります。1985年の東京桑野会会報第6号にも、「母校旧本館」の建築学的寄稿が掲載されています。「昔はかっこいい」という題名ですが、ぜひご一読ください。
 水口さんへひとこと! せっかくワープロに打ったのですから、原稿は紙でなく電子媒体で下さい!
↓↓東京桑野会会報第6号(1985年)7頁をご覧ください。
http://www.tokyo-kuwano.com/kaiho6_1985.pdf
↓↓『重要文化財 旧福島県尋常中学校本館修復工事報告書』(1980年9月)の写真・図表
http://www.tokyo-kuwano.com/honkan_syufuku1980.pdf
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